あるいは、「シュミレーション」 表記から考える技術書の効果的な校正。
最近こういうツイートが流れていて、丁度手元に1冊の本に対する150箇所の誤植メモがあったので書いてみます。なお、元ツイートには前後の文脈やら色々ありそうなので、以下でこのツイートに関する話はしません。
上のキャプチャは、2014年11月に出版された「ARM Cortex-A9×2! ZynqでワンチップLinux on FPGA」のp.210に記載されているVHDLコードの解説部分です。
技術書にあるまじき趣味レーション、もといシュミレーションという記述があります。
デバッグをデバック、ベッドをベット、東京ビッグサイトを東京ビックサイト、ビックカメラをビッグカメラとか、よく見かける間違いですね。口語で曖昧になりがちな濁音や拗音を文字にすると目立ちます。別の系統ではダイアモンドとダイヤモンドはどちらもアリ、鉄道ダイアとは言わない、カラトリーじゃなくてカトラリー、などなど、こういう微妙な表記は日常でもよく見かけます。
アボカドをアボガドと発音したり、文字で書く時もアボガドって書く人も結構いるわけです。大半の場合に会話は英語音をベースにしてるはずなので、"avocado"のどこに「ガ」の音があるんだ、となりますが、スペイン語では「アボガード」っぽい発音のようなので単に本格派なだけかもしれません。
それでも書籍へまとめる際は、一般的または出版社の規定にあわせて単語や文体を揃える作業がおこなわれ、きっと「アボガド」表記は絶滅して「アボカド」へ整えられます。
FPGA本の話に戻ります。
誤植一覧記事でも書いたように、本の構成と内容はとても良いです。もしもこの本無しでVivadoを使い始めていたら、入門部分で1ヶ月は軽くかかったでしょう。
この本のガイドによってそれを1週間へと短縮できました。非常に高い価値を感じます。
しかし、この本のいくつかの章はおそらく編集者さんの手元で校正を受けずに世へと出ています。
原稿の提出がギリギリだったとか、編集フェイズの中で校正内容が巻き戻ったとか、ひょっとすると章立てをだいぶ作業の後半で変えることになったとか、急遽章を付け足したとか、そういう事情があるのかもしれません。
それを推測するのも一興ですが、せっかく生原稿に近いものが5,832円で入手できたので、ここでは編集と制作と校正に関する話で骨までしゃぶり尽くすことにしましょう。