microUSBコネクタを基板上に形成する実験

2016年11月9日水曜日

8pinoすごい

今年のMaker Faire Tokyoで遅ればせながら購入した8pino(図1)、いろいろと良いところがあります。なかでも特に良いと感じたのが「そのままmicroUSBケーブルへ挿せる構造」です。
図1 8pinoの外観
8pino設計者の方による解説がArduino Advent Calendar 2015のArduinoを自作して量産して販売する(超小型Arduino互換機 8pinoを例に)エントリにあるので参照してください。とても勉強になります。
8pinoの良さはここで語り尽くせないほどあるのですが、電源周りについてもクールなところが盛りだくさんです。今回は前述の、microUSBケーブルとの組み合わせで使い勝手がとても良いという点に注目しました。

試作基板にはなるべくmicroUSB-Bコネクタがあってほしい

microUSB(とUSB Type-C)ケーブルさえあれば大体の電源事情を解消できそうな昨今、試作基板にもスナックにmicroUSB風のコネクタが付いていると便利そうです。表面実装用のmicroUSB-Bコネクタは秋月でも1つ60円程度しますし、サッと動作を確認したい時にもはんだ付けが必要なのは面倒だからです。
基板が仕上がったらとにかくmicroUSBケーブルをつないで通電チェックをできる状態を目標に、8pino風のmicroUSB-Bっぽいコネクタを試作してみました。

どうすればmicroUSB-B端子っぽく振る舞えるのか

既存のUSBコネクタに関する基本的な仕様はhttp://www.mouser.com/ds/2/185/ZX_catalog-939768.pdfhttps://www.rcscomponents.kiev.ua/datasheets/esb22.pdfなど、ネット上のあちこちで見つけられます。
いくつか調べた結果、microUSB-Bコネクタは
  • 0.65mmピッチ
  • 端子幅0.4mm程度
  • ピン奥行き1.4mm前後
  • 厚み0.6mm-0.8mm?
という仕様で作れば最低限の電源コネクタとしての用途を満たせて、かつ運が良ければ通信にも利用できそう、という結論へ至りました。

試作してみた

試作にあたっては8pinoの設計データ(EAGLEのものが公開されている)から該当部分を抜き出すというアプローチもあったと思いますが、私が利用しているのはKiCadなので 新たにデータを起こすことにしました。
PCBはElecrowで製造する前提とし、同社がサポートする基板厚の中から今回は0.6mmを選びました。
どのようなパターンを試作すれば良いでしょうか。前述のQiitaエントリには
MicroUSBコネクタを使わずにケーブル側の細長いスロットに差し込む独自の端子を作ろうとチャレンジしため、0.1mm単位での調整を繰り返し行うことでなんとか実用的に使える状態に落ち着きました
と書かれていてなかなか苦労しそうな感じがします。
パラメータはおそらく端子(ランド)幅、コネクタ高さ(挿し込み深さ)、コネクタ幅の3軸なので、なるべく効率的に多くの試作パターンを作れるように考えてみました。
端子幅に3パターン、コネクタ高さに3パターンの都合9パターンをベースとして、10cm x 10cmの基板になるべく多くの試作品を収められるように配置しました(この作業は自動化できそう)。その結果42パターンを載せられることが分かり、コネクタ幅を5種類作成することにしました。切りの良い45パターンには少々足りないので、最後の分からは勝ち目の薄そうな端子幅パターンを除きました。
結果の基板が図2です。
図2 42種類のコネクタを10cm x 10cmに収めた

無駄な1ピン

今回は5穴のピンヘッダを付けていますが、これ明らかに1つ不要です。USB-OTG用の識別ピンはどのみち使わないため誤接触の原因を減らすべく省略したのですが、ピンヘッダ側から削るのをすっかり忘れていました。この無駄ピンを丁寧に取り除けば1枚に49パターン詰め込めたと思うのですが、せっせと42パターンを配置してそれぞれに検証用のカスタムを加えている途中で気付いたので、さすがに手戻りが大きすぎて諦めました。
待つこと数日、無事に基板が届きました(図3)。
図3 42のサブ基板を持つ基板
ミシン目基板カッターを用意して待ち構えたのですが、0.6mm厚の基板はミシン目部分を普通に手で折れたため出番無しでした。

コネクタ評価

早速、42パターンのうち条件を絞り込みつつあれこれ試してみました。
  • 1-9はコネクタ幅が広すぎて全然ささらない。ムリをするとケーブルを痛めそうなので止めた
  • 同、10-18はコネクタ幅が狭すぎてグラグラする。一応電圧はちゃんとかかっているのを確認できた
  • 19/22/25も依然横動きが大きいのが気になる。電圧はかかるので隣のピンとの距離は問題なさそう
  • 28だいぶきっちりして良い
    • 横動きがほとんどない
  • 31も結構いい
  • 34が今のところ一番いい
    • 横向きの遊びが微妙にある→グラつくほどではないけれど抜き差しのしやすさに寄与していると感じる
    • 差し込みがそこまで深くないので、全力で抜き差しせずに済む。また、コネクタ部分の露出が減るほど 折れて持って行かれる心配が減りそう
    • 根本からカーブかかって差し口に向かっているのも良い感じ
      • ほどほどの場所で止まってくれる
  • 35でもいけそうだけど、端子がギリギリのところに接触しそうで少々危険を感じる
    • ランド細さの分
これにより、暫定で34番を採用することに決めました。同サブ基板を折り取って多少整形してピンヘッダを立てると図4の通り、ブレッドボードやユニバーサル基板上で扱いやすい形に仕上がります。
図4 ピンヘッダを立てた版
ブレッドボードへ挿した状態でmicroUSBケーブルを接続し、USB充電器から5.18Vを入力できていることを確認しました。

基板の強度

今回使った0.6mm厚基板の強度がコネクタ寿命に直結するため少々気になります。あまり正確な評価はできませんが、手作業で簡単にコネクタ部分の強度を確認しました。
  • 素手でコネクタ付近を握って折り曲げるのは自分では(少なくとも簡単には)ムリな感じだった
    • 相当力を入れた結果、メリメリと音はしたけれど折れはしてない(内部でパターンの断線はあるかもしれない)
さすがガラエポというか、そこそこの強さはありそうです。通常の金属・樹脂製microUSB-Bコネクタのように1万回の抜き差し耐性とはいかないと思いますが、100回程度なら割と問題ないのではないか、という感覚を得ました。じきに100回程度の抜き差しテストはやってみるつもりです。
なお、あまり多くのmicroUSBケーブルで動作を確認できたわけではないので、もう少し種類を広げてやってみます。

動作確認と今後

今回はとにかくさまざまなバリエーションを作って実用性の高い構成を見つけることに注力したので、結果に満足しています。
今後はピンヘッダを4ピン化したり、microUSB-Bコネクタの実装も任意で可能な構造にしてみたいと考えています。プロトタイプ中は基板上の簡易コネクタを利用しておいて、仕上げるタイミングできちんとコネクタをハンダ付けする、という使い方ができると便利そうな気がしませんか。
これらを盛り込んだ設計で0.6mm/0.8mm基板を作成すると一段落つきそうです。一通り仕上がったらGitHubで設計データ(フットプリントライブラリ)を公開し、KiCadで簡単にインポートして使えるようにします。

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