よなよなリフロー: 極小レギュレータ MIC5524-3.3V

2016年11月14日月曜日

いまさらながら自宅でリフローできる環境を整えたで書いたとおり自宅に基板のリフロー環境をつくったので、早速ひとつ焼いてみました。

極小?レギュレータ?

レギュレータは指定範囲の入力電圧からビシッと指定電圧を生成してくれるパーツです。内部に昇圧機能を持たないものは出力よりも高い電圧を入力として動作します。製品特徴としてLDO(Low DropOut)を謳うものは、入出力電圧差が小さくても動作します(特性は通常データシートへ記載されます)。
今回リフローに利用したのは8pino設計者の方がQiitaに書いていたArduinoを自作して量産して販売する(超小型Arduino互換機 8pinoを例に)内で紹介されていた1mm角のレギュレータ、MIC5524シリーズの3.3V出力版(Micrel社)です。
Mouserで購入しました。データシートはhttp://www.mouser.com/ds/2/268/MIC5524_2pg-778803.pdfです。

1mm角??

1mm角というのは相当小さくて、表面実装向けパーツの寸法でいうと0404にあたります。これぐらいの寸法のパーツは普通抵抗やセラミックコンデンサなど2接点なのですが、このレギュレータは四隅に小さな接点を持ちます(図1)。中央はヒートシンク用のエリアが大きめに取られています。
図1 MIC5524のピンレイアウト(前述のデータシートより引用)

フットプリント作成

当然KiCadの標準ライブラリに含まれないパーツなので、ライブラリとあわせてフットプリントを自作します。
しかしこのレギュレータは変則的な形状のパッドを要求します。
KiCadではそもそも自由形状のパッドを作れません。パッド形状にポリゴンを当てる機能が内部的にでも存在すればデータファイルを手動生成して切り抜けられるところですが、残念ながら内部実装もないためカスタム形状の作成は困難です。
それでも台形のパッドは作成できるので、複数のパッドを組み合わせてひとつのパッドへと仕上げるゴリ押しはできそうです。実際、手元で台形パッドを組み合わせて推奨パターンに近いフットプリントを作成してみました。しかしpcbnewでの配線工程時に配線が全然くっついてくれません。どうも内部で合成したパッド同士が干渉して整合性エラーになっているような挙動でした。
パッドの合成方法が間違っているのかもしれません(くっついているパッド同士に同じ番号を振る必要があるかも)が、設計時は急いでいたため諦めて最低限のパッドのみを配置しました(結果: 図2)。
図2 MIC5524のフットプリント(試作)

基板設計

推奨パターンのフットプリントを作れなかったのがイマイチですが、基板設計はシンプルです。基本的に入出力端子の至近へ小容量のセラミックコンデンサを置くだけです。データシートに明記されている通り、タンタルコンデンサなどが不要でセラミックコンデンサを使えるのは嬉しいです(結果: 図3)。
図3 基板設計結果

発注から到着まで

リフロー用のステンシル作成の都合もあり、基板はElecrowで注文しました。他の基板と一緒にミシン目切り取り用の面付けをおこない、注文から8日程度で到着しました。
図4 完成した基板
外形の四隅にはステンシルの位置合わせ用にPCB設計上で0603のコンデンサをぽちぽちと配置してありますが、これらは実際には配線すらしておらず、実装しません。位置合わせは通常のリフロー手順でも何かしら必要なはずなので、定番の手法があるのかもしれません(どなたかご存知でしたら教えてください)。

ソルダーペースト塗りとパーツ配置

フットプリントデータの作成時から分かっていたことですが、レギュレータ本体のハンダ用パッドが本当に小さいです。
図5がステンシルの拡大写真です。上下に4つ大きな穴のように見えるのが0603のセラミックコンデンサ用の穴です。
図5 ステンシル
内側の四隅にあるパッドは0.25x0.32mmで、油断するとソルダーペーストがうまく抜けきらずステンシル側へくっついてきました。
都合、2回ソルダーペーストを拭ってやり直しました。
1mm角パーツは初めて扱ったため、ピンセットとルーペを利用してもなかなか思うように移動できませんでした。特に、「どこへ配置するのが正しいのか」が分かりづらく、最終的にえいやっと載せました。
後から考えると今回は完全にシルクの作り方をミスっていました。自宅リフロー向けのシルク印刷は「どう描けばパーツを載せるための最良のガイドとなるか」を考えて作り込むべきですね。
ルーペを覗き込みつつパーツを載せていく段階では、真上からパーツを降ろしていく形を取ります。遠近感がうまく掴めずに「あれ、まだ基板面じゃないんだっけ?」と混乱することが何度かありました。一度ターゲット領域の近くの非ソルダーペースト領域へパーツを置いてみて遠近感を補正するのが良いと思います。
図6 ソルダーペーストを塗った状態
図6は2回失敗した後の最終版の写真で、中心の極小パッド5点へ確実にペーストを載せるべく少々力押しをしていました。このとき力の掛け方を失敗したためか、周辺のセラミックコンデンサ用パッドでペーストが染み出したように溢れています。ステンシルへ均一に力をかけつつ塗布するのにもいくらか経験が必要そうです。

リフロー

例のグリル鍋ベースのリフロー機へ投入し、様子を見つつ15分ほど(冷却込み)で完成しました。今回、特殊な手順はありませんでした。

リフロー結果

図7 できあがった基板の拡大写真
パーツ配置時の終盤に諦めながら置いたため、正直なところ失敗したと思っていました。しかし想像以上にきちんとはんだ付けされており(図7)、動作も確認できました(図8)。
図8 動作テスト結果
ここでは、microUSBコネクタを基板上に形成する実験で作ったmicroUSBコネクタから5.18Vの電源を拾ってレギュレータで3.3Vを生成してみました。やはりあのmicroUSBコネクタはプロトタイプ向きだな、と感じました。
ステンシルの都合上、載ったハンダ量もギリギリの少なさのはずです。うまくいったのはおそらく、ソルダーペーストの品質が良いためだと思います。

松尾ハンダのソルダーペースト

自宅リフロー環境を整える際に結構困ったのが、ソルダーペースト(クリームハンダ)の入手です。Amazonのマーケットプレイスに少量品があるものの評判悪いです。aitendoでも同品を扱っていたようですが、欠品していました(廃盤?)。当然ながら秋月や千石でも入手できず、サンハヤトの品はあくまでも手ハンダ用のペーストです。
経験値が低い中でいきなり極小レギュレータという高難易度パーツを利用しているので、ソルダーペーストには良い品を使いたいという考えもありました。そんな中、松尾ハンダではソルダーペーストを個人にも販売してくださるという噂を聞きつけて早速見積もり依頼を出し、FLF01-BZ(L)を購入しました。
ソルダーペーストの相場を考えるとおそらく若干高めの価格なのですが、国内の評判良いメーカーさんで鉛フリーかつ高品質仕上がり、そして品質保持のためにクール便で配送してもらえるというのを考えるとものすごく安いと思います。出荷パッケージとしては250gと500gのボトルがあり、500gを有効期限(製造から半年間)内に使い切れる気がしないので今回は250gボトルをお願いしました。先方でかかる見積もり/発送/経理系の手間を考えると明らかにほとんど利益が出ない価格です。少量注文で申し訳ないなぁという気持ちと共に、しっかり対応頂けたことにひたすら感謝しました。
図9 松尾ハンダのソルダーペースト(鉛フリー)
ソルダーペーストは冷蔵保存して硬くなったものを利用前に数時間室温で置くのが定石のようです。液体と固体を何度も行き来させると、フラックスがどんどん揮発していってしまいそうなので、到着後なるべく急いで手持ちのビンへ小分けしました。
図10 手持ちビンへの小分け
きちんと計っていませんが、160g/60g/30g程度に分けてIKEAの保存バッグへ入れました。冷蔵庫内の低温でもフラックスが揮発していくようなら容器内の空き体積が増えた分だけ逆効果(ソルダーペーストの寿命を縮める)な可能性もありますが、このあたりはやってみないとなんとも、です。
ハンダ面が分かりやすい写真は図11です。
図11 ハンダ面の拡大写真
想像以上にきれいに付きました。

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