今更ながら自宅で基板をリフローできる環境を整えた

2016年11月7日月曜日

はじめに

  • リフローとは何か、については本ページでは触れないので、適宜ネットで調べてみてください
  • 免責事項: 本ページで記載している内容は100V、12Aという大電流を扱うものです。パーツの組み方や運用の仕方によっては火災や感電へ発展する危険があります。この情報をもとにして事故が発生したとしても執筆者は一切の責任を負いません

自宅リフロー、流行りましたね

数年前に自宅リフローがいわゆるMakers方面で流行しました。
チップ抵抗やコンデンサ、各種LSIのような表面実装部品(SMD)を自宅環境でも比較的高い精度で手早く高密度実装できることが嬉しい、と広く紹介されていた記憶があります。当時、ホットプレートやオーブントースターを利用してストップウォッチ片手にリフローをおこなうチュートリアルを多く見かけましたが、最近はあまり見かけない話題です。
元々アクティブだった方が一通りやり終えて卒業したのかもしれませんし、関西のたこ焼き器並に1家1台状態と化して話題にならないだけなのかもしれませんが、よくわかりません。軽く調べてみると、挟ピッチ部品についてはユポ紙ステンシル作りの面倒さや精度・耐久性の低さ、リフロー工程の温度管理が難しいことによる歩留まりの悪さを嘆く声があるようでした。

自宅リフローをやりたい気持ちが高まった

そもそもなんでこのタイミングで?というと、主に3方向のモチベーションがあります。
  • 評価ボード入手困難系: 使ってみたいチップの評価ボードが存在しない/簡単に入手できない
  • ちっちゃい部品使いたい系: 使いたいコンポーネントが寸法(パーツ寸法・ピッチなどさまざま)的に専用基板必須
  • 純粋な勉強系: 電子回路の設計力が著しく低いのでちゃんと物を形にしつつ勉強していきたい意味合い

今回の自宅リフロー環境構築指針

  • 商業で一般的な温度プロファイルに基づいた加熱を指向する既存手法を極力なぞる
    • 私はこの方面の専門家ではないので、なおさら最初にきちんと筋の良さそうな方法を見極めてなぞりたい
  • トースター系よりはホットプレート/グリル鍋系の既存手法に沿って進める
    • 両面実装の道は諦める。下部加熱による基板へのダメージも諦める(あまりにも品質が酷いようなら再考する)
  • 既存手法のうち、低リスクで2016年事情にあわせたリファインをできそうな部分はアレンジする
    • 安価に入手可能な部材が変わっているケースへの対応
  • カッティングシートを利用したステンシル自作はおこなわない
    • 0.5mmピッチのチップを使いたいケースが多いが、軽く調べた範囲ではこの領域を紙ステンシルで安定させるのは難しそう。このため紙系ステンシル利用によるコストダウン/リードタイム短縮は最初から諦める
    • 原則的にElecrowでのPCB Prototypingサービスのステンシル作成オプション(+$16.00)へ頼る
  • T-962A改造よりは安価に仕上げる

参考にしたページ

しなぷす氏のArduinoとホットプレートを使ったリフロー装置(1号機)の製作(1)です。この手順には続編があり、そちらに従うとリフローのプロファイルを複数保持して選択できるようになるのですが、今回はシンプルなほうを選びました。
参考にしたというか、1点を除いて利用パーツは全てこのページに記載のものですし、ソフトウェア面でもArduinoのスケッチはこのページで公開されているものをそのまま利用しました。
重要パーツである液晶モジュール(しなぷす氏設計・製作)を購入したことで多少なりとも還元されていることを祈ります。

参考ページとの差分: グリル鍋の違い

今回のアレンジ部分です。
元の手順で紹介されていたのは山善のGN-1200(T)という型番のグリル鍋です。この製品はAmazon取扱開始が2005/4/20で、1週間ほどチラチラと在庫を確認していた限りではAmazon自体にはもう新品を入荷しておらず、マーケットプレイス扱いのみのようです。
そして、平均評価が高く、型番指定の参照記事や外部サイトでのレビュー/評判があり、Amazon本家で扱いの無くなった商品は得てして価格が安定せず、高騰しがちです。
今回もそのパターンだと判断し、新型番の同型機を探すことにしました。そしてスペック表をじっくり確認しつつ見つけたのが山善(YAMAZEN) グリル鍋 1200W 容量2L(直径23 深さ5cm) ブラック YGA-120(B)です。

2015/7/22に扱いが開始されたばかりで、近未来まで供給が続くことを期待できます。
気になるのは前製品との差ですが、元々人気商品であったため、基本的にはパッケージ変更または利用パーツの小規模な置き換えあるいは細かな金型変更という程度の差分だとあたりを付けました。しかし実際に問題なく使えるかは計測してみないと分かりません。
今回は実利用の前準備として、参考ページのスケッチを利用して加熱試験をおこなった際の温度変化を計測した結果を後述します。
・・・どうもこの商品は本当に人気のようで、本エントリの執筆時点でグリル鍋カテゴリ1位、Amazonの在庫が切れてマーケットプレイス分のみになっています。結果、安価に購入できない状態なのですが まあこれは時期が悪いというか、寒くなったのでみんな鍋をしたくなったのでしょう。私が購入した際にはAmazon在庫にて2,436円(税込・プライムでの送料無料・当日配達可能)でした。
念のため近場のビックカメラの売り場を確認したところ、寸法といい出力といい同一品らしい雰囲気の製品が売られていました。「壊れて困るものは量販店で買える製品を選ぶべし」とは某keijiro氏の教えでして、妥当の感があります。とはいえ今回の場合は多少落ち着けばAmazonで普通に買えるでしょう。

得られた実装

図1 パーツを揃えたところ
図2 一通りのはんだ付け系作業を終えたところ
スイッチサイエンスで購入したK型熱電対キット、端子部分がもう少しきっちり嵌まるはずなんですが、このあたりが限界でした。変ですね、問い合わせてみます。
図3 スケッチ動作と熱電対の動作を別電源で駆動したドライヤーで確認したところ
図4 グリル鍋を実際に利用してリフロー試験をおこなったところ

温度管理の実測結果

主要コンポーネントであるグリル鍋を元ページの推奨品から変えたことで最も気になるのは温度管理への反応差とリフローフェーズでの最高到達点差です。
今回はリフロー手順を一周終えて冷却フェーズまで進み、その後に十分間ほど経過した状態から、二度目の温度管理試験時に今回利用しているArduinoスケッチの特徴でもある温度変化ロギング機能で記録してみました。
グラフ化した結果が図5です。生のCSVファイルはgistに貼ってあります
図5 温度変化のログ可視化
二度目ということで、48.0度スタートです。室温は20度程度だったため、数秒間の差があるはずで、絶対的な時間にさほど意味はありません。
冷却フェーズは電源を切り蓋を開放して冷やしているだけなので、温度上昇側のみを抜き出したグラフを下半分に置いています。
加熱1→プリヒート→加熱2→リフローがきっちりとできています。この温度プロファイルと制御、優秀ですね。

パーツの入手性について

元記事が書かれて3年経ったことで(入手はできたものの)多少なりともパーツの入手性に変化があると感じたのでメモしておきます。ひょっとすると2017年には推奨構成に多少手を加えたほうが良いかもしれません。

大電流大型リレーモジュールキット 12V版

想定外に在庫が少なくて焦ったのは秋月電子通商の大電流大型リレーモジュールキット 12V版でした。
一通り環境を作り終わった後で改めて同ページを見ると
※5V版、近日発売⇒K-11245
との表記がありました。
今回使ったパーツの中でArduinoに12V電源を利用している理由はこのリレーキットなので、これが100V15-20Aで利用できるものであれば、今後は5V版で代替できるかもしれません。
5V版で代替できると嬉しいのが、制御ボードにRaspberry Piシリーズ(以下RPi)を使いやすい点です。実際のところ、最近見かける自宅リフローのチュートリアルでは(ADCが不要なこともあってか)制御用にRPiを使っているものが多いです。今回の構成をRPi化アレンジすることで、2線で制御できる便利な液晶コンポーネントとその表示による一目瞭然なUIを維持しつつ、温度プロファイルの保存や管理/差し替え/実測情報の保存やネット経由での共有といった面で可能性が広がりそうです。

K型熱電対センサーキット

スイッチサイエンスでは、K型熱電対温度センサモジュールキット(SPI接続)MAX31855使用 5V版--在庫限りを名前の通り新規入荷しない方針に見えます。
3.3V版のモジュールと分圧抵抗で頑張るのも少々微妙感があり、K型熱電対温度センサモジュールキット(SPI接続)MAX6675使用での代用が無難かもしれません。零下の計測は基本的に必要ありませんし。

この先

Elecrowで注文していた基板・ステンシルのセットが届いているので、某国内メーカーのソルダーペースト(クリームはんだ)が届いたら実際にSMDをピンセットで配置してやっていきます。まずはPIC16Fをリフローしてみようと思います。

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